Windows Server のライセンス計算に必要な概念と用語

ライセンスとコスト
 

 
 
 
ライセンス体系の解説を始める前に、ライセンス計算をする為に必要な言葉の定義を理解して貰う必要がある。
これらの言葉を把握していないとライセンス数を数える事もできない。
 
言葉の数が多く、気が滅入る人もいるかも知れないが、一つ一つの言葉はOSを語る時の常識的な用語ばかりなので、見慣れない言葉でも既知の概念を表す言葉に過ぎない。
頭の中の知識と、以下の言葉を結びつけるだけである。
 
この記事を読んでから、Microsoftの公式解説を読むとかなり分かりやすくなるばすだ。
 
サーバー側とクライアント側でライセンスの数え方は違うので、使用する用語も異なる。
サーバー側から順に解説する。
 

サーバー・ライセンス用語

 

コア数

サーバー・ライセンスの説明で出てくる「コア」とは、CPUのマルチコア・プロセッサの物理コアのことである。
仮想コアのことではない。
コア・スレッド表記のコア数を意味する。
 

コア・ライセンス

 

定義1:必要なライセンス数を表す

Windows Server のサーバーライセンスはCPUの物理コアの数により、必要なライセンス数が異なる。
必要なライセンス数を数える時に「コア・ライセンス」という概念を用いる。
通常は物理コアの総数がコア・ライセンス数になる。
 
例えば「2コアCPUが2つの時、4コアライセンスが必要」という具合に、CPUとコアの構成と関係無く、必要なライセンスの数を抽象化して表す為の概念である。
最低限必要なライセンス数を数える為に使用する。
実際に購入しなければならないライセンス数は、コアライセンス数以外の要素も含めて計算する。
 

定義2:ライセンス方式の種類を表す

また、他の定義として、必要なライセンス数を表す意味の他に、ライセンスの数え方の種類を表す場合もある。
 
物理コアの数に応じてライセンス数が変わるライセンス方式の事を「コア・ライセンス方式」と呼ぶ場合もある。
Datacenter(データセンター)エディションとStandard(スタンダード)エディションが、コア・ライセンス方式を採用している。
 
対立用語として「サーバー・ライセンス方式」がある。
 

サーバー・ライセンス

物理コアの数に応じて、必要なライセンス数が変わるライセンス方式と異なり、単純にサーバーの個数ごとに、必要なライセンス数を数える方式。
Essentials(エッセンシャル)エディションが、サーバー・ライセンス方式を採用している。
 

ライセンス・サーバー

サーバー・ライセンスを前後をひっくり返しただけに見えるが、意味は全く異なる。
 
エディションの種類やコア・ライセンス方式やサーバー・ライセンス方式などと関係無く、
それぞれのライセンス方式の条件に従い、
正規のWindows Server ライセンスを保有して稼働している「サーバー機」の事を「ライセンス・サーバー」と呼ぶ。
 

筐体ライセンス(造語)

ライセンス・サーバーの個数のこと。
ライセンス・サーバーのライセンスの事でもある。
ライセンス・サーバー・ライセンスと呼んでも良いが、これでは冗長で認識し難い。
ライセンス・サーバーのサーバー機個数と、筐体ライセンスの個数は同じ個数になる。
ライセンス・サーバーについてMicrosoftの公式ドキュメントが、その言葉の定義を明確にしていないため、この解説記事を書くために、私が「筐体ライセンス」という言葉を造った。
私の造語である。
「筐体ライセンス」の概念が無いと、仮想環境のライセンス数の計算が分かりにくくなる。
他の解説サイトもこの点が非常に分かりにくい。
 

ソフトウェア・インスタンス

インスタンスという言葉は、OSやアプリなど、ソフトウェアに対してメモリ領域が割り当てられ、ソフトウェアが起動しているプロセスの実体メモリを表す言葉である。
 
単純にソフトウェアと呼ぶ場合は、CD-ROMやDVD-ROMなどのマスターディスクに入っているソフトウェア製品や、ZIP圧縮ファイルなどに格納され、まだコンピュータにインストールされていないソフトウェアを含める。
 
しかし、ソフトウェア・インスタンスと呼ぶ場合は、既にハードウェアにソフトウェアがインストールされ、起動していてメモリ空間が与えられている「現在稼働しているソフトウェア」を意味する。
この呼び方はOSでもアプリでも同じである。
ちなみにアプリの場合は単純にインスタンスと呼ぶことが多い。
 
プログラマーがコンピュータ言語のクラスを宣言して実体メモリをクラスに割り当てた時に、この実体をインスタンスと呼ぶが、これも同じ意味である。
 

仮想環境・仮想マシン・Hyper-V

コンピュータ・ハードウェアにOSをインストールして、稼働しているOSの事を物理OS、又は物理環境と呼ぶ。
この物理OS上で、ソフトウェアにより擬似的にCPUの動作をエミュレーションして、別のOSを起動する事ができる。
これを可能にするソフトウェアをエミュレータと呼び、Windows Server には標準でHyper-V(ハイパー・ブイ)というエミュレーターが装備されている。
 
エミュレータは大きく分けて二種類あり、ホストOS型とハイパーバイザー型がある。
ホストOS型とは、先の説明のように、物理OS上で別のOSを起動する方式のエミュレーターである。
ハイパーバイザー型は、物理OSを含めて全てのOSがハイパーバイザー上で稼働する方式である。実質的には物理OSが無い状態とも言える。
ただ実際にはエミュレーターを制御するアプリを稼働するOSが必要になるので、ハイパーバイザー型エミュレータでも「物理OS」の概念はある。
 
Hyper-Vはハイパーバイザー型なので、実は物理OSの Windows Server 自身も Hyper-V の上で稼働している。
 
ホストOS型とハイパーバイザー型を問わず、物理OS上で稼働する別のOSを「仮想環境」とか「仮想OS」と呼ぶ。
仮想環境は別の呼び方で「仮想マシン」と呼ぶこともあり、Windows Server の公式ガイドにも時々「仮想マシン」と表記されることがある。
しかし、「仮想マシン」という呼び方は、Java や .NET などのアプリの仮想実行環境を示す言葉として先に使用され始めた言葉であり、Java VMや.NET のCLRの呼び名で主に使われている用語である。
Hyper-V上で起動するOSについては「仮想環境」や「仮想OS」の方が相応しい呼び名だと思う。誤解もされにくい。
 
Hyper-Vを使用すると、Windows Server 上で Windows Server や Linux ディストリビューション(Ubuntu, Oracle Linuxなど)を、いくつも稼働させることができる。
この Windows Server 上で稼働する Windows Server や Linux ディストリビューションが「仮想環境」であり「仮想OS」である。
 
実行できる「仮想OS」の数もライセンス規定により異なる。
 

ホスト・ホストOS

仮想環境における、ハードウェアに直接インストールされる物理OSの事を「ホスト」又は「ホストOS」と呼ぶ。
 

ゲスト・ゲストOS

仮想環境における、物理OSの上で稼働する仮想OSの事を「ゲスト」又は「ゲストOS」と呼ぶ。
 

OSE:オペレーティングシステム環境

OSEとは Operating System Environment の略で、日本語では「オペレーティングシステム環境」と呼ばれる。
 
仮想環境における物理環境(物理OS)と仮想環境(仮想OS)を含めた、OSの実行環境の総称である。
 
ライセンス条件やその制限の説明で、物理環境や仮想環境を問わず、実行できる実行環境の個数を表す為にOSEという言葉を使用する。
 
通常はコンテナを含まないのだが、Hyper-Vコンテナは含む場合がある。
しかし、これも「Hyper-Vコンテナは仮想環境のこと」だと解釈すれば「コンテナはOSEに含まない」という理解で良いと思う。
 

物理OSE

物理OSの事である。
 

仮想OSE

仮想OSの事である。
 

コンテナ

Windows Server では、Docker によりいくつものコンテナ環境を稼働させる事ができる。
そして使用できるコンテナの数はライセンス規定により、制限される場合がある。
 
Windows版の Docker には、通常コンテナとHyper-Vコンテナがあり、それぞれライセンス規定により使用できる制限が異なる。
 

Windows Server コンテナ(通常コンテナ)

Dockerの「プロセス分離モード」のコンテナのこと。
Windows Server カーネルで起動している。
 

Hyper-Vコンテナ

Dockerの「Hyper-V分離モード」のコンテナのこと。
仮想環境から提供されるカーネルで起動している。
Windows Server カーネルだけではなく、Linuxカーネルを使用することもできる。
また、旧バージョンのWindows Server カーネルを使用することもできる。
 

コアパック

コアパックとはMicrosoftのコアライセンスの販売形態である。
コアライセンスは1個単位では販売していない。
コアライセンスは複数単位でパッケージ化されており、ユーザーはMicrosoftのパッケージ単位でしか、コアライセンスを購入できない。
Microsoftのサーバー側コアライセンスのSKUである。
 

2コアパック

CPUの物理コア2つ分のコアライセンス・パッケージ。
 

16コアパック

CPUの物理コア16つ分のコアライセンス・パッケージ。
 

コアパックによるコアライセンス購入

コアライセンスを購入する時は、2コアパックと16コアパックの組み合わせで、ユーザーが必要なコアライセンス数を購入することになる。
 
例えば、8コアライセンス必要な場合は、2コアパックを4つ購入することになる。
32コアライセンス必要な場合は、16コアパックを2つ購入することになる。
24コアライセンス必要な場合は、16コアパックを1つと、2コアパックを4つ購入することになる。
 
半端な数として7コアライセンス欲しい場合は、2コアパックを4つ購入して、8コアライセンスを購入することになる。
21コアライセンスなら、16コアパックを1つと、2コアパックを3つ購入して、22コアライセンスを購入する。
 

クライアント・ライセンス用語

ここからはクライアント側のライセンス用語を解説する。
サーバー側に比べると簡単だと思う。
 

CAL:クライアント・アクセス・ライセンス

Essentials(エッセンシャル)エディションの場合は、そのアクセス上限数(ユーザー25人・デバイス50台)まで、自由にアクセスできるので、クライアント側に特別なアクセス用ライセンスを購入する必要は無い。
 
しかし、Datacenter(データセンター)とStandard(スタンダード)エディションは、クライアント側にサーバーに対するアクセス権を購入しなければならない。
このアクセス権のことを、CAL(Client Access License) と呼ぶ。
 
この記事は用語解説なので、CALのルールについては別の記事で詳しく解説する。
ここでは解説しないが、CALの種類として、ユーザー単位とデバイス単位のアクセス権がある事は明示しておく。
 

ユーザーCAL

クライアント端末からサーバーへアクセスするとき、端末装置ではなく利用しているユーザーアカウントに対して、アクセス権を与えるCALである。
使用する端末が変わってもサーバーにアクセスする事ができる。
社員ユーザーなどは、社員にCALが与えられていれば、社内のどのサーバーに対してもアクセスできる必要がある。
そういう場合、アクセス権は個人に対して与える必要があり、そういう目的でユーザーCALを使用する。
 

デバイスCAL

クライアント端末からサーバーへアクセスするとき、ユーザーに関係無く、特定の端末装置からのアクセスであればアクセスできるCALである。
POSレジのような端末であれば、誰が会計していてもサーバーにアクセスできる必要がある。
そういう場合、アクセス権は端末装置に対して与える必要があり、そういう目的でデバイスCALを使用する。
 

ベースアクセスライセンス

ライセンス・サーバーに初期段階で付いているクライアント・ライセンスのこと。
通常はCALとECが一つ付いている。
 

EC:エクスターナル・コネクタ

エクスターナル・コネクタとは、Windows Server 側にクライアントからのアクセス・ライセンスを保有するアクセス・ライセンスのこと。
CALのようにユーザー単位、デバイス単位で提供される。
 
エクスターナル・コネクタは物理的なライセンス・サーバー機単位で提供される。
 
ベース・アクセス・ライセンスに追加する形で取得する。
 

RD:リモート・デスクトップ

RD(Remote Desktop)とは、クライアント端末からリモートでWindows Server へログインするシンクライアント的な機能だ。
RDのアクセス権はEC:エクスターナル・コネクタで提供される。
どこからアクセスするかはあまり関係無い。
 

AD:アクティブ・ディレクトリ

AD(Active Directory)とは、組織などにおいてメンバー・ユーザーアカウントの管理をドメインコントローラーによって一元管理するシステムである。
ドメインサーバーにユーザーアカウント情報を一括苦悩しており、パスワードなどアカウント情報などが変更された場合、直ちに組織内ネットワークに反映する事ができる。
ドメインサーバーへのアクセス権はEC:エクスターナル・コネクタで提供される。
 

IM:アイデンティティ・マネージャ

IM(Identity Manager)とは、AD(Active Directory)では管理しきれない、より多くのユーザーを管理できるようにする、ADの拡張機能とも言える多数のユーザーアカウントの一元管理システムである。
IMのアクセス権はEC:エクスターナル・コネクタで提供される。
 

次へ続く

 
以上が、用語解説。
 
次は、サーバーライセンス体系の解説に進む。
 
 
 
 
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