Gemini 3.0 に、CPU,GPU,TPUの違いを質問してみたので、ここで共有します。
ほぼ、自分用です。
NPUについては、後で解説が出てきます。
生成AIの回答には間違いが含まれている可能性があるので、それを踏まえて読んでください。
「AIに記事を書かせるなんてケシカラン」という思想の方はスルーしてください。
CPU,GPU,TPU それぞれの違いを、わかりやすく解説してください。
CPU の基本的な仕組みは知っていますが、GPU,TPU の仕組みは知りません。
その前提でお願いします。
質問の動機は、ただの好奇心です。
ソフトウェアから見たCPU,GPU,TPUの違いを解説してください。
命令セット(アセンブラ)で三つを比較すると、CPUとGPU,TPUはどんなところが違うのでしょうか。
CPUが賢いのなら、GPUは命令セットも単純なのでしょうか。TPUになると想像ができません。
面白い視点ですね!「ソフトウェア(命令セット)」から見ると、三者の性格の違いがより浮き彫りになります。
CPUの仕組みをご存知とのことですので、そこを基準に**「プログラマが命令したとき、ハードウェアがどう振る舞うか」**という視点で比較します。
結論から言うと、ユーザー様が想像された「GPUは命令セットが単純なのでは?」という仮説は、**「制御(分岐など)に関しては単純だが、計算に関しては超並列用の特殊な命令がある」**というのが正解です。
そしてTPUは、**「1つの命令が指す意味が桁違いに巨大」**という特徴があります。
1. CPU:マイクロマネジメントの達人(スカラー命令)
CPUの命令セット(x86やARM)は、**「複雑な条件分岐」と「割り込み」**を処理することに命をかけています。
命令の特徴:
- 1つの命令で、1つ(または少数)のデータを扱います(スカラー処理)。
- 分岐予測と投機実行:
JUMPやBRANCH(if文)が大量にあっても、CPUは「次はこっちに行くだろう」と予測して先回りして実行します。これがCPUの「賢さ」の正体です。
アセンブラのイメージ:
LOAD A, [Address1] ; メモリからAを取ってくる LOAD B, [Address2] ; メモリからBを取ってくる CMP A, B ; AとBを比較する JUMP_IF_EQUAL Label ; もし同じならあっちへ行け(分岐) ADD A, B ; 違ったら足すこのように、**「1ステップごとに細かく確認し、次にどこへ行くか判断する」**のがCPUの命令です。
2. GPU:号令をかける軍隊長(SIMT / ベクトル命令)
GPUの命令セット(NVIDIAのPTXなど)は、**「何千人もの兵士(スレッド)に、一斉に同じ動きをさせる」**ために設計されています。
命令の特徴:
- SIMT (Single Instruction, Multiple Threads): プログラム上は「1つの命令」に見えますが、ハードウェア上ではそれを32個や64個のコアが一斉に実行します。
- 「単純」な部分: CPUのような高度な「分岐予測」機能はほとんどありません。if文が深くなると、とたんに性能が落ちます(全員が足並みを揃えないといけないため)。
- 「特殊」な部分: 「条件付き実行(Predication)」という仕組みを使います。「もしAならBせよ」という時、CPUはジャンプしますが、GPUは**「全員にとりあえずBを実行させ、Aじゃなかった奴の結果だけ捨てる(無効化マスクをかける)」**という力技を使います。
アセンブラのイメージ:
; 1行書くと、1000個のコアで同時に実行されるイメージ LOAD R1, [BaseAddr + ThreadID] ; 自分のIDに応じたデータを取れ FMA R1, R2, R3 ; 掛け算して足せ (Fused Multiply-Add) ; if (R1 > 0) のような分岐の代わり SET_PREDICATE P1, (R1 > 0) ; R1が0より大きい奴だけ手を挙げろ(P1フラグ) @P1 ADD R1, R1, 1 ; 手を挙げている奴だけ、1を足せ(他は休んでろ)CPUのように「あっちへジャンプ」するのではなく、**「号令に合わせて動くか、休むか」**という命令スタイルです。
3. TPU:巨大工場のボタン(CISCの極致 / 行列命令)
TPUの命令セットは、想像しづらいのも無理はありません。なぜなら、命令の粒度がCPU/GPUとは次元が違うからです。これをCISC(Complex Instruction Set Computer)の極致と表現することもあります。
命令の特徴:
- CPUやGPUが「1 + 1」や「ベクトル + ベクトル」を命令するのに対し、TPUの命令(XLAコンパイラが生成するもの)は**「巨大な行列A × 巨大な行列B」**を1つの単位として扱います。
- 1つの命令(Instruction)を発行すると、ハードウェアの中では数万サイクルの間、データがパイプラインを流れ続け、計算が終わるまで次の命令が必要ないこともあります。
- これを「プログラム」として書くというよりは、「工場のライン構成図」をハードウェアに送り込むイメージに近いです。
アセンブラ(概念)のイメージ:
; CPUなら数万行のループになる処理が、TPUではこうなるイメージ MATRIX_LOAD M1, [Address_A] ; 1024x1024の行列をメモリからロードせよ MATRIX_LOAD M2, [Address_B] ; もう一つの行列をロードせよ MATRIX_MULTIPLY M3, M1, M2 ; この2つを掛け合わせよ(この1行で数億回の計算が走る) MATRIX_STORE [Address_C], M3 ; 結果を保存せよTPUにとっての「1命令」は、CPUにとっての「サブルーチン(関数)」レベルの重さがあります。「細かい条件分岐」などは一切できません。 ただひたすら、ベルトコンベアに乗せて計算するだけです。
まとめ:命令セットから見た違い
| 特徴 | CPU | GPU | TPU |
|---|---|---|---|
| 命令の対象 | スカラー(1つの数値) | ベクトル(数値の列) | テンソル(数値の2次元配列) |
| 制御(if文) | 得意(分岐予測で先回り) | 苦手(マスク処理で誤魔化す) | 不可能(ホストのCPUに任せる) |
| 命令の粒度 | マイクロマネジメント | 分隊への号令 | 工場の起動ボタン |
| ソフトウェア視点 | 複雑なロジックを書く場所 | 同じ計算を大量にばら撒く場所 | データフロー(計算グラフ)を流し込む場所 |
ソフトウェア側から見ると、
- CPUは、指揮官として細かく条件を判断する。
- GPUは、CPUから渡された「同じ計算」を、大勢で一斉に行う(個々の判断は許されない)。
- TPUは、もはやプログラミングというより「データという水を流す配管」を設計し、一度流し始めたら計算が終わるまで止まらない。
という違いがあります。
ユーザー様への次のステップ
「TPUの命令セット」はGoogle内部の仕様(XLA/HLO)に隠蔽されていて普段見ることはありませんが、もしご興味があれば、**「なぜGPUやTPUではif文(分岐)が遅くなるのか」**という、ハードウェアの「物理的な制約」についてもう少し深掘りすることもできます。いかがいたしましょうか?
その前に、GPUとTPUの代表的な命令セットの例を、一覧にして見せて欲しいです。
TPUの場合、正確な仕様は分からないようですが、仮想的なモデルでも良いので、一覧を作成して欲しいです。
CPUは x86-64、GPUは NVIDIA PTX(中間言語)、TPUは XLA HLO(Googleのコンパイラ中間言語)をベースにした、代表的な命令の比較一覧を作成しました。
特にTPUは、ハードウェアの生(Raw)の命令セットは非公開ですが、Googleが公開している**XLA(Accelerated Linear Algebra)**というコンパイラ言語が、実質的にTPUへの命令書となっています。
ソフトウェアから見た「命令の粒度」と「世界観」の違いをご覧ください。
1. 命令カテゴリー別比較一覧
| カテゴリー | CPU (x86) | GPU (NVIDIA PTX) | TPU (XLA HLO / 仮想) |
|---|---|---|---|
| 扱うデータ | レジスタ内の1つの数値 | スレッドごとの数値(数千個並列) | 形状(Shape)を持つ巨大な多次元配列 |
| 演算(足し算) | ADD EAX, EBX (AとBを足す) | add.f32 %f1, %f2, %f3 (数千のスレッドで同時に足す) | add(f32[1024,1024] %x, f32[1024,1024] %y) (行列丸ごと足し算) |
| 演算(積和) | IMUL と ADD を組み合わせる | fma.rn.f32 %f1, %f2, %f3, %f4 (掛け算して足す、を1命令で) | dot(f32[128,128] %x, f32[128,128] %y) (巨大な行列積を一撃で実行) |
| メモリ読込 | MOV EAX, [PTR] (任意のアドレスから取得) | ld.global.f32 %f1, [ptr] (VRAMから各スレッドへ分配) | copy(f32[1024,1024] %x) (HBMメモリからチップへストリーム転送) |
| 制御(If文) | CMP, JE (Jump Equal) (アドレスをジャンプする) | setp.eq.f32 %p1, %f1, 0 @%p1 bra LABEL (条件フラグを立てて実行可否を決める) | 基本なし ( select 命令などで数値を切り替えるのみ。ジャンプ不可) |
| 自己認識 | 特になし | mov.u32 %r1, %tid.x (私は何番目のスレッドか?) | replica_id (私はどのTPUチップか?) |
2. 具体的なコードの見た目(イメージ)
それぞれのプロセッサに対して、「配列 A と B を足して、結果を C に入れる」という処理を命令セットレベルで書くと、以下のようになります。
① CPU (x86 Assembly)
特徴: ループを作り、1つずつ(あるいは数個ずつ)データを処理してはメモリに戻す作業を繰り返します。
; ループの準備
MOV RCX, 1024 ; カウンタセット(1024回回す)
MOV RSI, [Addr_A] ; Aのアドレス
MOV RDI, [Addr_B] ; Bのアドレス
LOOP_START:
MOV EAX, [RSI] ; 1. Aから1つ数値をロード
ADD EAX, [RDI] ; 2. Bの数値を足す
MOV [RDX], EAX ; 3. 結果をメモリに保存
ADD RSI, 4 ; 次のデータへポインタ移動
ADD RDI, 4
DEC RCX ; カウンタを減らす
JNZ LOOP_START ; 0になるまでジャンプして繰り返す
② GPU (PTX – Parallel Thread Execution)
特徴: ループ(繰り返し)がありません。代わりに「自分のスレッドID」を確認し、自分担当のデータを処理します。このコードが数千個のコアで同時に走ります。
.entry vector_add ( .param .u64 param_A, .param .u64 param_B, ... ) {
.reg .u32 %tid, %ntid, %ctaid;
.reg .f32 %valA, %valB, %res;
; 1. 自分のID(Thread ID)を取得
mov.u32 %tid, %tid.x;
; 2. 自分のIDに基づいて、読み込むメモリアドレスを計算
mul.wide.u32 %offset, %tid, 4;
add.u64 %ptrA, %baseA, %offset;
; 3. メモリからロードして足し算
ld.global.f32 %valA, [%ptrA];
ld.global.f32 %valB, [%ptrB];
add.f32 %res, %valA, %valB; ; ここで一斉に計算
; 4. 保存
st.global.f32 [%ptrC], %res;
}
③ TPU (XLA HLO – High Level Optimizer)
特徴: もはや「手順」ではありません。「定義」です。「1024個の要素を持つ配列同士を足す」という1行の命令が、巨大なハードウェアエンジンを動かします。
HloModule vector_add_module
ENTRY %main {
; 1. パラメータ(巨大なデータの塊)を受け取る
%parameter.1 = f32[1024]{0} parameter(0)
%parameter.2 = f32[1024]{0} parameter(1)
; 2. 「足せ」という命令。
; CPUのようにループもなければ、GPUのようにID計算もしない。
; "f32[1024]" という形状全体に対して、add が一瞬で適用される。
ROOT %add = f32[1024]{0} add(f32[1024]{0} %parameter.1, f32[1024]{0} %parameter.2)
}
3. 解説:なぜここまで違うのか?
TPUの命令が「アセンブラっぽくない」理由
TPU(XLA HLO)の命令を見ると、プログラミング言語のように見えますが、これがTPUにとっては**「1命令」に近い扱い**になります。
- CPU/GPU: 「レジスタ」という小さな作業台にデータを載せて計算します。
- TPU: チップ上の「行列演算ユニット(MXU)」そのものが巨大な作業台です。
dot(行列積) という命令が来ると、数万個のデータがチップ上のパイプラインに流し込まれ、ハードウェアの物理的な配線を通る過程で計算が完了します。
命令セットの複雑さ (CISC vs RISC vs VLIW)
- CPU: 複雑な制御が可能。分岐、割り込み、OS管理などの命令が充実しています。
- GPU: 計算命令はリッチ(
fma,rsqrtなど)ですが、制御命令はシンプル化されています。 - TPU: 「演算命令」の種類は非常に少ないです(行列積、畳み込み、リシェイプなど)。その代わり、1つの命令で処理するデータ量が圧倒的です。
ユーザー様への次のステップ
この違いを見ると、なぜ「TPUでOS(Windowsなど)を動かせないのか」や「なぜGPUでExcelを動かさないのか」が、ハードウェアレベルで納得いただけるかと思います。
より物理的なイメージを掴むために、次は**「この命令を受け取った時、チップの中をデータがどう流れるか(図解的なイメージ)」**について解説することも可能です。特にTPUの「シストリック・アレイ」はデータの流れ方が特殊で面白いですが、いかがでしょうか?
「この命令を受け取った時、チップの中をデータがどう流れるか(図解的なイメージ)」
は興味があります。解説してください。
ありがとうございます。チップの中の「データの流れ(データフロー)」の視点は、それぞれのプロセッサの性格を最も劇的に表す部分です。
一言で言うと、「計算している時間」と「データを運んでいる時間」のどちらが支配的か、という戦いの歴史です。
それぞれのチップの中で、電子(データ)がどのように駆け巡っているか、図解的なイメージで解説します。
1. CPU:高速なピンポン(往復運動)
CPUのデータの流れは、「計算ユニット(ALU)」と「メモリ(レジスタ・キャッシュ)」の間の激しい往復です。
イメージ図: 「ワンマン経営の社長室」
データの動き:
- 取ってくる(Load): 社長(ALU)が「資料Aを持ってこい!」と叫ぶと、部下が書庫(メモリ)からデスク(レジスタ)へ資料を持ってきます。
- 計算する(Calc): 社長がハンコを押します(計算)。
- 戻す(Store): 社長が「終わったから片付けて!」と言い、部下が書庫へ戻します。
- 次!: 「次は資料Bだ!」
この「行って、帰って」の往復が毎回発生します。これをフォン・ノイマン・ボトルネックと呼びます。CPUはこの「移動時間」を短縮するために、超高速な一時置き場(キャッシュメモリ)を近くに置いていますが、基本構造は「往復」です。
弱点: 計算自体は一瞬なのに、「データを持ってくる待ち時間」が頻発します。
2. GPU:巨大なシャワー(並列放射)
GPUのデータの流れは、「巨大なタンクから、数千個の蛇口へ一気に水を撒く」イメージです。
イメージ図: 「工場のベルトコンベアと、横一列に並んだ数千人の作業員」
データの動き:
- 一斉配給(Memory Burst): VRAM(ビデオメモリ)という巨大な倉庫から、幅の広い道路を通って、データが「ドバッ」と流れてきます。
- 全員で作業(Parallel Calc): 3,000人の作業員(コア)が、流れてきた部品を一斉に受け取り、一斉にネジを回します。
- 一斉回収: 完成品をまた「ドバッ」と倉庫へ送り返します。
GPUは「個々のデータの到着」を待つのではなく、「大量のデータが届くまで待って、届いたら一気に処理する」スタイルです。
弱点: 大量に流すのは得意ですが、個々の作業員同士で「ねえ、そっちの部品どうなった?」と会話(データのやり取り)をするのは非常に苦手で遅いです。
3. TPU:心臓の鼓動(シストリック・アレイ)
ここが最もユニークです。TPUのデータの流れは、「バケツリレー」であり、データがチップの上を「通過」する間に計算が終わります。 これを「シストリック(心臓の収縮)・アレイ」と呼びます。
イメージ図: 「整然と並んだ組体操の集団」
データの動き:
注入: 左側からデータ(例えば画像データ)が、上からデータ(AIのパラメータ)が入ります。
バケツリレー(Flow):
- 一番左のユニットが計算します。
- 【ここが重要】 計算結果をメモリに戻さず、そのまま「右隣の人」と「下の人」に手渡します。
- 受け取った人は、自分の持っているデータと足し合わせて、さらに隣へ渡します。
排出: データが右端・下端に到達した時には、すべての計算が終わっています。
なぜこれが凄いのか?(CPU/GPUとの決定的違い)
CPUやGPUは、計算するたびに「レジスタ」や「メモリ」へアクセスします。 しかしTPUは、一度データを入れたら、チップ内部の数万個の計算ユニットを通り抜けるまで、一切メモリにアクセスしません。
- CPU/GPU: 計算1回につき、メモリ移動が何度も発生。
- TPU: メモリから1回読み出せば、チップ内で数万回の計算に使い回せる。
これが、TPUがAI(行列演算)において圧倒的に省電力で高速な理由です。データ移動のコストを極限までゼロにしているのです。
まとめ:データの旅路
| プロセッサ | データの動き | 例え | 特徴 |
|---|---|---|---|
| CPU | 往復 (Ping-Pong) | 秘書が書庫とデスクを何度も往復する | 柔軟だが、移動時間が無駄 |
| GPU | 放射 (Broadcast) | ダムの放流のように一気に流し、一気に吸い上げる | 大量なら速いが、小回りは利かない |
| TPU | 通過 (Systolic) | ベルトコンベアの上を流れる間に完成する | 移動ゼロ。AI計算以外は何もできない |
ユーザー様への次のステップ
この「シストリック・アレイ」という仕組みは、実はGoogleの発明ではなく、1970年代から理論としてはありましたが、AIブームによって「行列演算」の重要性が爆発し、Googleが実用化したことで脚光を浴びました。
もしご興味があれば、「なぜこのTPUの仕組みだと、普通のプログラム(OSやWebブラウザ)は動かないのか?」という点を、このデータフローの観点から解説すると、CPUの偉大さが逆に浮き彫りになります。いかがでしょうか?
「なぜこのTPUの仕組みだと、普通のプログラム(OSやWebブラウザ)は動かないのか?」
を解説してください。
TPUの「シストリック・アレイ(バケツリレー)」という仕組みが、なぜOSやWebブラウザのような普通のプログラムにとって「致命的に使いにくい」のか。
一言で言うと、「OSやブラウザは『気まぐれな迷路』であり、TPUは『直線の高速道路』しか走れないから」です。
先ほどの「バケツリレー」のイメージを使って、TPUが普通のプログラムを実行しようとした時に起きる3つの悲劇を解説します。
悲劇1:条件分岐(If文)でラインが全停止する
OSやブラウザのプログラムは、「ユーザーが何をするか分からない」ことを前提に作られています。
- 「もしマウスがクリックされたら、Aをする」
- 「もしクリックされなかったら、Bをする」
- 「もしネットが遅かったら、Cをする」
このように、次にやるべきことが状況次第でコロコロ変わります(これを条件分岐と言います)。
TPUでやるとどうなる?
TPUのシストリック・アレイは、数万人の作業員が「全員でリズムを合わせて」隣の人にデータを渡すことで成立しています。
- 問題発生: 先頭のデータが「もしAなら…」という分岐点(If文)に差し掛かります。
- 大渋滞: CPUなら一人で判断してサッと動けますが、TPUは数万人の隊列です。「え、次はどっち?右?左?」と確認している間、後ろに続く数万個のデータも、数万人の作業員も、全員その場で立ち止まって待たなければなりません。
- 結果: パイプラインが詰まり、TPUの爆速性能は完全にゼロになります。
イメージ: 高速道路で、先頭の車が「右折しようかな、左折しようかな」と交差点のたびに一時停止していたら、後ろは大渋滞になりますよね。TPUはブレーキを踏むのが大の苦手なのです。
悲劇2:たった1つの計算のために、巨大工場を動かす無駄
Webブラウザを使っているとき、例えば「文字を1文字入力する」という処理は、コンピュータにとっては非常に小さな計算です。
TPUでやるとどうなる?
TPUは「巨大な行列(例:1万個 × 1万個の数値)」を計算するために設計されています。
- 問題発生: 「『あ』という文字を表示せよ」という、ごく小さな命令が来ます。
- コスト過多: TPUにとっては、1個のデータを処理するのも、1万個のデータを処理するのも、「工場全体を起動する」という手間(オーバーヘッド)は同じです。
- 結果: たった1文字を表示するために、巨大な発電所を起動するようなもので、準備時間がかかりすぎて逆に遅くなります(レイテンシが悪い)。
イメージ: 「コンビニに牛乳を1本買いに行く」ために、フェラーリならまだしも、全長300メートルの巨大タンカーを出そうとしている状態です。港を出る準備だけで日が暮れてしまいます。CPU(原付バイク)で行った方が圧倒的に速いです。
悲劇3:メモリの「拾い読み」ができない
OSやブラウザは、メモリのあちこちに散らばったデータを頻繁に拾いに行きます(ランダムアクセス)。 「フォントデータはあっち」「画像のキャッシュはこっち」「入力履歴はそっち」といった具合です。
TPUでやるとどうなる?
TPUのシストリック・アレイは、「整列したデータが、ベルトコンベアに乗って順番に来ること」が大前提です。
- 問題発生: 「あっちの棚のデータが欲しい」と言われます。
- 機能不全: TPUのベルトコンベアは、構造上「特定の棚だけ取りに行く」ようにはできていません。一度ベルトコンベアに乗せた順序でしか処理できないのです。
- 結果: 必要なデータを揃えて綺麗に並べ直す作業(CPUの仕事)が必要になり、TPU自体は何もできずに待機することになります。
イメージ: 工場のライン作業員に、「倉庫の奥にある、あの赤い箱だけ取ってきて」と頼むようなものです。彼らは「流れてきたものを加工する」プロであって、「倉庫内を探し回る」機能は持っていません。
まとめ:適材適所
| 特徴 | 普通のプログラム (OS/Web) | AIの計算 (学習/推論) |
|---|---|---|
| 動き方 | 迷路(あっちへ行ったり戻ったり) | 直線(ひたすら前へ進む) |
| データ量 | 小刻みでバラバラ | 巨大で整列されている |
| 必要な能力 | 臨機応変さ (CPUが得意) | 圧倒的な流量 (TPUが得意) |
| 例え | タクシー(小回り重視) | 貨物列車(大量輸送重視) |
「普通のプログラム」が動かないのは、TPUが劣っているからではなく、「貨物列車(TPU)は、路地裏(複雑な分岐処理)には入れない」という物理的な相性の問題なのです。
だからこそ、現代の最強のコンピュータ構成は、以下のようなチームプレイになっています。
- CPU(司令塔): OSを動かし、複雑な判断をし、TPUにデータを綺麗に整えて渡す。
- TPU(エンジン): 渡された巨大なデータを、何も考えずに爆速で計算してCPUに返す。
ユーザー様への次のステップ
ここまでで、CPU、GPU、TPUの「役割」「仕組み」「データの流れ」の違いはかなりクリアになったかと思います。
もしハードウェアの話題にご興味があれば、「この3つが実際に1つの基板(マザーボードやSoC)の上で、物理的にどう繋がっているのか?」という「接続」の話に進むこともできますし、あるいは少し視点を変えて、「最近話題のNPU(Neural Processing Unit)は、TPUと何が違うのか?」という、身近なスマホなどの話題に移ることもできます。
どちらの方向に関心がありますか?
「最近話題のNPU(Neural Processing Unit)は、TPUと何が違うのか?」
これも興味があります。教えてください。
NPU(Neural Processing Unit)とTPUの違い、非常に良い着眼点です! 最近のスマホや「AI PC」の話題でよく耳にしますよね。
結論から言うと、この2つの最大の違いは「活動場所(クラウドか、手元か)」と「求められる能力(パワーか、省エネか)」です。
先ほどの「貨物列車」の例えを使って、一言で表します。
TPU(Google Cloud):
- 巨大な貨物列車です。
- Googleの巨大倉庫(データセンター)の中にあり、電力と場所を無制限に使って、とてつもない量の荷物を運びます。
NPU(スマホ・PC):
- 電動アシスト自転車(ウーバーイーツ)です。
- あなたの手元(スマホやPC)にあり、限られたバッテリーで、小回りを利かせて「今すぐ」必要なものを届けます。
1. 決定的な違い:ブランド名か、一般名詞か
まず、混乱しやすい名前の整理から入ります。
TPU: Googleの商品名です(商標)。Googleが作ったAIチップだけがTPUを名乗れます。
- ※実はスマホ(Pixel)に入っているGoogle製NPUも「Edge TPU」と呼ばれますが、基本は「Google製」のことです。
NPU: 一般名詞です。各メーカーが作る「AI用チップ」の総称です。
- Appleは「Neural Engine」
- Intel/AMDは「NPU」
- Qualcommは「Hexagon NPU」 などと呼びますが、やっていることは全員「NPU」です。
2. 技術的な3つの違い
では、中身(仕組み)はどう違うのでしょうか? NPUは、「TPUの仕組み(シストリック・アレイなど)を、極限まで小さく・省エネにしたもの」と考えて差し支えありませんが、NPUならではの工夫があります。
① 仕事の内容: 「学習」vs「推論」
TPU (学習が得意):
- AIモデルをゼロから賢くする「学習(Training)」には、何ヶ月もかかる膨大な計算と、高い精度が必要です。TPUはこの「重労働」を担います。
NPU (推論が得意):
- すでに賢くなったAIを使って、答えを出す「推論(Inference)」を行います。
- 「写真に写っているのは猫?」と判定するだけなら、そこまでの馬力は要りません。NPUはここに特化しています。
② 計算の「雑さ」: 小数点 vs 整数
ここがハードウェア的に面白い点です。
TPU: 「0.12345…」のような細かい浮動小数点(Float)を使って、精密に計算します。学習にはこの細かさが必要だからです。
NPU: 「大体合ってればいい」という割り切りを行い、整数(Integer / Int8)で計算することが多いです。
- AIの推論(顔認証など)は、実は「0.12345」を「0.12」くらいに大雑把に丸めて計算しても、結果はほとんど変わりません。
- これを量子化(Quantization)と言います。計算を単純にすることで、回路を小さくし、バッテリー消費を劇的に抑えています。
③ データの距離: 遅延(レイテンシ)
- TPU: ネットの向こう側にあります。あなたのスマホから画像を送って、TPUで計算して、結果が返ってくるまでには通信の待ち時間が発生します。
- NPU: あなたのスマホの中にあります。通信ゼロで、瞬時に翻訳したり、カメラの補正をしたりできます。
まとめ:比較表
| 項目 | TPU (Cloud) | NPU (Edge) |
|---|---|---|
| 場所 | データセンター(クラウド) | スマホ、PC、家電(エッジ) |
| 電力 | 数キロワット(爆熱・巨大冷却) | 数ワット〜ミリワット(バッテリー駆動) |
| 役割 | 学習(AIを作る)、巨大モデルの推論 | 推論(AIを使う) |
| 計算精度 | 高精度(32bit / 16bit Float) | 低精度で高速(8bit Integerなど) |
| 例え | 巨大貨物列車 | 電動アシスト自転車 |
なぜ今、NPUが話題なのか?
ChatGPTなどの巨大なAIはTPU(やGPU)で動いていますが、最近は「ネットに繋がずにPCの中でAIを動かしたい」(プライバシー保護や、反応速度のため)という需要が急増しています。
そのため、IntelやAppleは「CPUでもGPUでもなく、NPUを強化して、バッテリーを減らさずにAIを動かせるようにしよう」と必死になっているのです。

CPUの仕組みをご存知であれば、GPUとTPUの違いは「得意な計算のタイプ」と「作業の進め方」の違いとして理解すると非常にスムーズです。
まずは一言でイメージを掴んでいただくための例え話から始め、その後に具体的な「仕組み」を解説します。
1. 直感的なイメージ:料理の例え
コンピュータの処理を「料理」に例えると、それぞれの役割は以下のようになります。
CPU(天才シェフ)
GPU(1,000人のアルバイト)
TPU(全自動・玉ねぎ千切りマシーン)
2. 仕組みの違い:ここがポイント
CPUの仕組み(命令を順序よく処理する)をベースに、GPUとTPUがどう違うのかを技術的に解説します。
GPU (Graphics Processing Unit)
もともとは画像処理(3Dゲームの映像など)のために生まれました。画面上の「ピクセル」はそれぞれ独立しており、同時に計算できるため、並列処理に特化した進化を遂げました。
仕組み:SIMD(シムディー)
TPU (Tensor Processing Unit)
Googleが「ディープラーニング(AI)」のためだけに開発したASIC(特定用途向け集積回路)です。AIの計算は、実はそのほとんどが「掛け算をして、足し合わせる(積和演算)」という、巨大な行列計算です。
仕組み:シストリック・アレイ (Systolic Array)
3. 比較まとめ
ユーザー様への次のステップ
AI開発やゲーミングPCの選定など、具体的な用途で「どれを選ぶべきか」迷われている状況でしょうか?もしよろしければ、想定されている具体的な用途(例:LLMの学習、個人のPC自作、画像生成など)を教えていただければ、それに合わせたより実践的なアドバイスが可能です。