Gemini3に問うCPUとGPUとTPUの違い

生成AIに質問する

Gemini 3.0 に、CPU,GPU,TPUの違いを質問してみたので、ここで共有します。
ほぼ、自分用です。
NPUについては、後で解説が出てきます。
生成AIの回答には間違いが含まれている可能性があるので、それを踏まえて読んでください。
「AIに記事を書かせるなんてケシカラン」という思想の方はスルーしてください。

CPU,GPU,TPU それぞれの違いを、わかりやすく解説してください。
CPU の基本的な仕組みは知っていますが、GPU,TPU の仕組みは知りません。
その前提でお願いします。

CPUの仕組みをご存知であれば、GPUとTPUの違いは「得意な計算のタイプ」と「作業の進め方」の違いとして理解すると非常にスムーズです。

まずは一言でイメージを掴んでいただくための例え話から始め、その後に具体的な「仕組み」を解説します。


1. 直感的なイメージ:料理の例え

コンピュータの処理を「料理」に例えると、それぞれの役割は以下のようになります。

  • CPU(天才シェフ)

    • 役割: どんな難しい料理でも作れる。レシピを読み、指示を出し、複雑なコース料理も管理する。
    • 特徴: 非常に賢いが、手は2本しかない(コア数が少ない)。一度に大量の野菜を刻むような単純作業は、賢すぎて逆に効率が悪い。
  • GPU(1,000人のアルバイト)

    • 役割: シェフの指示に従い、単純作業を圧倒的な物量でこなす。
    • 特徴: 個々の能力はシェフに劣るが、人数が桁違い(コア数が数千)。「全員で玉ねぎを千切りにする」といった並列作業が最強。
  • TPU(全自動・玉ねぎ千切りマシーン)

    • 役割: 「AIの計算(行列演算)」という特定の作業だけを、爆速で行うために作られた専用機械。
    • 特徴: 料理の管理も、肉を焼くこともできない。しかし、「玉ねぎの千切り」に関してだけは、シェフ(CPU)やアルバイト集団(GPU)よりも遥かに速く、省エネで実行できる。

2. 仕組みの違い:ここがポイント

CPUの仕組み(命令を順序よく処理する)をベースに、GPUとTPUがどう違うのかを技術的に解説します。

GPU (Graphics Processing Unit)

もともとは画像処理(3Dゲームの映像など)のために生まれました。画面上の「ピクセル」はそれぞれ独立しており、同時に計算できるため、並列処理に特化した進化を遂げました。

  • 仕組み:SIMD(シムディー)

    • CPUは「難しい計算」を「順番」にこなしますが、GPUは「単純な計算」を「同時」にこなします。
    • SIMD (Single Instruction, Multiple Data) という仕組みを使います。これは、「命令は1つ(例:数値を足せ)」で、「データは大量(例:1万個のデータ)」を一気に処理する方法です。
    • CPUが数個〜数十個の「賢いコア」を持つのに対し、GPUは数千個の「小さなコア」を持っており、これらが一斉に動きます。

TPU (Tensor Processing Unit)

Googleが「ディープラーニング(AI)」のためだけに開発したASIC(特定用途向け集積回路)です。AIの計算は、実はそのほとんどが「掛け算をして、足し合わせる(積和演算)」という、巨大な行列計算です。

  • 仕組み:シストリック・アレイ (Systolic Array)

    • ここがGPUとの最大の違いです。
    • CPUやGPUは、計算のたびに「メモリ(倉庫)」からデータを取り出し、計算して、また戻すという往復が発生します(これがタイムロスになります)。
    • TPUは、心臓の鼓動(Systolic)のように、データがチップ内を「ベルトコンベア」のように流れながら、次々と計算されていきます。
    • 前の計算結果をメモリに戻さず、そのまま隣の計算ユニットに渡して次の計算に使うため、メモリへのアクセス回数が激減し、圧倒的な高速化と省電力を実現しています。

3. 比較まとめ

項目CPUGPUTPU
正式名称Central Processing UnitGraphics Processing UnitTensor Processing Unit
得意なこと複雑な判断、管理、汎用的な処理並列処理(画像、シミュレーション)行列演算(AIの学習・推論)
コアの数少ない(数個〜数十個)多い(数千個〜)巨大な計算配列(アレイ)
柔軟性高い(何でもできる)中(並列処理なら何でも)低い(AI計算特化)
例え天才シェフ大量のアルバイト集団専用の全自動調理マシン

ユーザー様への次のステップ

AI開発やゲーミングPCの選定など、具体的な用途で「どれを選ぶべきか」迷われている状況でしょうか?もしよろしければ、想定されている具体的な用途(例:LLMの学習、個人のPC自作、画像生成など)を教えていただければ、それに合わせたより実践的なアドバイスが可能です。

質問の動機は、ただの好奇心です。
ソフトウェアから見たCPU,GPU,TPUの違いを解説してください。
命令セット(アセンブラ)で三つを比較すると、CPUとGPU,TPUはどんなところが違うのでしょうか。
CPUが賢いのなら、GPUは命令セットも単純なのでしょうか。TPUになると想像ができません。

面白い視点ですね!「ソフトウェア(命令セット)」から見ると、三者の性格の違いがより浮き彫りになります。

CPUの仕組みをご存知とのことですので、そこを基準に**「プログラマが命令したとき、ハードウェアがどう振る舞うか」**という視点で比較します。

結論から言うと、ユーザー様が想像された「GPUは命令セットが単純なのでは?」という仮説は、**「制御(分岐など)に関しては単純だが、計算に関しては超並列用の特殊な命令がある」**というのが正解です。

そしてTPUは、**「1つの命令が指す意味が桁違いに巨大」**という特徴があります。


1. CPU:マイクロマネジメントの達人(スカラー命令)

CPUの命令セット(x86やARM)は、**「複雑な条件分岐」と「割り込み」**を処理することに命をかけています。

  • 命令の特徴:

    • 1つの命令で、1つ(または少数)のデータを扱います(スカラー処理)。
    • 分岐予測と投機実行: JUMPBRANCH(if文)が大量にあっても、CPUは「次はこっちに行くだろう」と予測して先回りして実行します。これがCPUの「賢さ」の正体です。
  • アセンブラのイメージ:

    LOAD A, [Address1]  ; メモリからAを取ってくる
    LOAD B, [Address2]  ; メモリからBを取ってくる
    CMP A, B            ; AとBを比較する
    JUMP_IF_EQUAL Label ; もし同じならあっちへ行け(分岐)
    ADD A, B            ; 違ったら足す
    

    このように、**「1ステップごとに細かく確認し、次にどこへ行くか判断する」**のがCPUの命令です。

2. GPU:号令をかける軍隊長(SIMT / ベクトル命令)

GPUの命令セット(NVIDIAのPTXなど)は、**「何千人もの兵士(スレッド)に、一斉に同じ動きをさせる」**ために設計されています。

  • 命令の特徴:

    • SIMT (Single Instruction, Multiple Threads): プログラム上は「1つの命令」に見えますが、ハードウェア上ではそれを32個や64個のコアが一斉に実行します。
    • 「単純」な部分: CPUのような高度な「分岐予測」機能はほとんどありません。if文が深くなると、とたんに性能が落ちます(全員が足並みを揃えないといけないため)。
    • 「特殊」な部分: 「条件付き実行(Predication)」という仕組みを使います。「もしAならBせよ」という時、CPUはジャンプしますが、GPUは**「全員にとりあえずBを実行させ、Aじゃなかった奴の結果だけ捨てる(無効化マスクをかける)」**という力技を使います。
  • アセンブラのイメージ:

    ; 1行書くと、1000個のコアで同時に実行されるイメージ
    LOAD R1, [BaseAddr + ThreadID] ; 自分のIDに応じたデータを取れ
    FMA R1, R2, R3                 ; 掛け算して足せ (Fused Multiply-Add)
    ; if (R1 > 0) のような分岐の代わり
    SET_PREDICATE P1, (R1 > 0)     ; R1が0より大きい奴だけ手を挙げろ(P1フラグ)
    @P1 ADD R1, R1, 1              ; 手を挙げている奴だけ、1を足せ(他は休んでろ)
    

    CPUのように「あっちへジャンプ」するのではなく、**「号令に合わせて動くか、休むか」**という命令スタイルです。

3. TPU:巨大工場のボタン(CISCの極致 / 行列命令)

TPUの命令セットは、想像しづらいのも無理はありません。なぜなら、命令の粒度がCPU/GPUとは次元が違うからです。これをCISC(Complex Instruction Set Computer)の極致と表現することもあります。

  • 命令の特徴:

    • CPUやGPUが「1 + 1」や「ベクトル + ベクトル」を命令するのに対し、TPUの命令(XLAコンパイラが生成するもの)は**「巨大な行列A × 巨大な行列B」**を1つの単位として扱います。
    • 1つの命令(Instruction)を発行すると、ハードウェアの中では数万サイクルの間、データがパイプラインを流れ続け、計算が終わるまで次の命令が必要ないこともあります。
    • これを「プログラム」として書くというよりは、「工場のライン構成図」をハードウェアに送り込むイメージに近いです。
  • アセンブラ(概念)のイメージ:

    ; CPUなら数万行のループになる処理が、TPUではこうなるイメージ
    MATRIX_LOAD M1, [Address_A]  ; 1024x1024の行列をメモリからロードせよ
    MATRIX_LOAD M2, [Address_B]  ; もう一つの行列をロードせよ
    MATRIX_MULTIPLY M3, M1, M2   ; この2つを掛け合わせよ(この1行で数億回の計算が走る)
    MATRIX_STORE [Address_C], M3 ; 結果を保存せよ
    

    TPUにとっての「1命令」は、CPUにとっての「サブルーチン(関数)」レベルの重さがあります。「細かい条件分岐」などは一切できません。 ただひたすら、ベルトコンベアに乗せて計算するだけです。


まとめ:命令セットから見た違い

特徴CPUGPUTPU
命令の対象スカラー(1つの数値)ベクトル(数値の列)テンソル(数値の2次元配列)
制御(if文)得意(分岐予測で先回り)苦手(マスク処理で誤魔化す)不可能(ホストのCPUに任せる)
命令の粒度マイクロマネジメント分隊への号令工場の起動ボタン
ソフトウェア視点複雑なロジックを書く場所同じ計算を大量にばら撒く場所データフロー(計算グラフ)を流し込む場所

ソフトウェア側から見ると、

  • CPUは、指揮官として細かく条件を判断する。
  • GPUは、CPUから渡された「同じ計算」を、大勢で一斉に行う(個々の判断は許されない)。
  • TPUは、もはやプログラミングというより「データという水を流す配管」を設計し、一度流し始めたら計算が終わるまで止まらない。

という違いがあります。

ユーザー様への次のステップ

「TPUの命令セット」はGoogle内部の仕様(XLA/HLO)に隠蔽されていて普段見ることはありませんが、もしご興味があれば、**「なぜGPUやTPUではif文(分岐)が遅くなるのか」**という、ハードウェアの「物理的な制約」についてもう少し深掘りすることもできます。いかがいたしましょうか?

その前に、GPUとTPUの代表的な命令セットの例を、一覧にして見せて欲しいです。
TPUの場合、正確な仕様は分からないようですが、仮想的なモデルでも良いので、一覧を作成して欲しいです。

CPUは x86-64、GPUは NVIDIA PTX(中間言語)、TPUは XLA HLO(Googleのコンパイラ中間言語)をベースにした、代表的な命令の比較一覧を作成しました。

特にTPUは、ハードウェアの生(Raw)の命令セットは非公開ですが、Googleが公開している**XLA(Accelerated Linear Algebra)**というコンパイラ言語が、実質的にTPUへの命令書となっています。

ソフトウェアから見た「命令の粒度」と「世界観」の違いをご覧ください。


1. 命令カテゴリー別比較一覧

カテゴリーCPU (x86)GPU (NVIDIA PTX)TPU (XLA HLO / 仮想)
扱うデータレジスタ内の1つの数値スレッドごとの数値(数千個並列)形状(Shape)を持つ巨大な多次元配列
演算(足し算)ADD EAX, EBX
(AとBを足す)
add.f32 %f1, %f2, %f3
(数千のスレッドで同時に足す)
add(f32[1024,1024] %x, f32[1024,1024] %y)
(行列丸ごと足し算)
演算(積和)IMULADD を組み合わせるfma.rn.f32 %f1, %f2, %f3, %f4
(掛け算して足す、を1命令で)
dot(f32[128,128] %x, f32[128,128] %y)
(巨大な行列積を一撃で実行)
メモリ読込MOV EAX, [PTR]
(任意のアドレスから取得)
ld.global.f32 %f1, [ptr]
(VRAMから各スレッドへ分配)
copy(f32[1024,1024] %x)
(HBMメモリからチップへストリーム転送)
制御(If文)CMP, JE (Jump Equal)
(アドレスをジャンプする)
setp.eq.f32 %p1, %f1, 0
@%p1 bra LABEL
(条件フラグを立てて実行可否を決める)
基本なし
(select 命令などで数値を切り替えるのみ。ジャンプ不可)
自己認識特になしmov.u32 %r1, %tid.x
(私は何番目のスレッドか?)
replica_id
(私はどのTPUチップか?)

2. 具体的なコードの見た目(イメージ)

それぞれのプロセッサに対して、「配列 A と B を足して、結果を C に入れる」という処理を命令セットレベルで書くと、以下のようになります。

① CPU (x86 Assembly)

特徴: ループを作り、1つずつ(あるいは数個ずつ)データを処理してはメモリに戻す作業を繰り返します。

; ループの準備
MOV RCX, 1024       ; カウンタセット(1024回回す)
MOV RSI, [Addr_A]   ; Aのアドレス
MOV RDI, [Addr_B]   ; Bのアドレス

LOOP_START:
    MOV EAX, [RSI]  ; 1. Aから1つ数値をロード
    ADD EAX, [RDI]  ; 2. Bの数値を足す
    MOV [RDX], EAX  ; 3. 結果をメモリに保存
    
    ADD RSI, 4      ; 次のデータへポインタ移動
    ADD RDI, 4
    DEC RCX         ; カウンタを減らす
    JNZ LOOP_START  ; 0になるまでジャンプして繰り返す

② GPU (PTX – Parallel Thread Execution)

特徴: ループ(繰り返し)がありません。代わりに「自分のスレッドID」を確認し、自分担当のデータを処理します。このコードが数千個のコアで同時に走ります。

.entry vector_add ( .param .u64 param_A, .param .u64 param_B, ... ) {
    .reg .u32 %tid, %ntid, %ctaid;
    .reg .f32 %valA, %valB, %res;
    
    ; 1. 自分のID(Thread ID)を取得
    mov.u32 %tid, %tid.x; 
    
    ; 2. 自分のIDに基づいて、読み込むメモリアドレスを計算
    mul.wide.u32 %offset, %tid, 4;
    add.u64 %ptrA, %baseA, %offset;
    
    ; 3. メモリからロードして足し算
    ld.global.f32 %valA, [%ptrA];
    ld.global.f32 %valB, [%ptrB];
    add.f32 %res, %valA, %valB;  ; ここで一斉に計算
    
    ; 4. 保存
    st.global.f32 [%ptrC], %res;
}

③ TPU (XLA HLO – High Level Optimizer)

特徴: もはや「手順」ではありません。「定義」です。「1024個の要素を持つ配列同士を足す」という1行の命令が、巨大なハードウェアエンジンを動かします。

HloModule vector_add_module

ENTRY %main {
  ; 1. パラメータ(巨大なデータの塊)を受け取る
  %parameter.1 = f32[1024]{0} parameter(0)
  %parameter.2 = f32[1024]{0} parameter(1)

  ; 2. 「足せ」という命令。
  ; CPUのようにループもなければ、GPUのようにID計算もしない。
  ; "f32[1024]" という形状全体に対して、add が一瞬で適用される。
  ROOT %add = f32[1024]{0} add(f32[1024]{0} %parameter.1, f32[1024]{0} %parameter.2)
}

3. 解説:なぜここまで違うのか?

TPUの命令が「アセンブラっぽくない」理由

TPU(XLA HLO)の命令を見ると、プログラミング言語のように見えますが、これがTPUにとっては**「1命令」に近い扱い**になります。

  • CPU/GPU: 「レジスタ」という小さな作業台にデータを載せて計算します。
  • TPU: チップ上の「行列演算ユニット(MXU)」そのものが巨大な作業台です。dot (行列積) という命令が来ると、数万個のデータがチップ上のパイプラインに流し込まれ、ハードウェアの物理的な配線を通る過程で計算が完了します。

命令セットの複雑さ (CISC vs RISC vs VLIW)

  • CPU: 複雑な制御が可能。分岐、割り込み、OS管理などの命令が充実しています。
  • GPU: 計算命令はリッチ(fma, rsqrtなど)ですが、制御命令はシンプル化されています。
  • TPU: 「演算命令」の種類は非常に少ないです(行列積、畳み込み、リシェイプなど)。その代わり、1つの命令で処理するデータ量が圧倒的です。

ユーザー様への次のステップ

この違いを見ると、なぜ「TPUでOS(Windowsなど)を動かせないのか」や「なぜGPUでExcelを動かさないのか」が、ハードウェアレベルで納得いただけるかと思います。

より物理的なイメージを掴むために、次は**「この命令を受け取った時、チップの中をデータがどう流れるか(図解的なイメージ)」**について解説することも可能です。特にTPUの「シストリック・アレイ」はデータの流れ方が特殊で面白いですが、いかがでしょうか?

「この命令を受け取った時、チップの中をデータがどう流れるか(図解的なイメージ)」
は興味があります。解説してください。

ありがとうございます。チップの中の「データの流れ(データフロー)」の視点は、それぞれのプロセッサの性格を最も劇的に表す部分です。

一言で言うと、「計算している時間」と「データを運んでいる時間」のどちらが支配的か、という戦いの歴史です。

それぞれのチップの中で、電子(データ)がどのように駆け巡っているか、図解的なイメージで解説します。


1. CPU:高速なピンポン(往復運動)

CPUのデータの流れは、「計算ユニット(ALU)」と「メモリ(レジスタ・キャッシュ)」の間の激しい往復です。

  • イメージ図: 「ワンマン経営の社長室」

  • データの動き:

    1. 取ってくる(Load): 社長(ALU)が「資料Aを持ってこい!」と叫ぶと、部下が書庫(メモリ)からデスク(レジスタ)へ資料を持ってきます。
    2. 計算する(Calc): 社長がハンコを押します(計算)。
    3. 戻す(Store): 社長が「終わったから片付けて!」と言い、部下が書庫へ戻します。
    4. 次!: 「次は資料Bだ!」

この「行って、帰って」の往復が毎回発生します。これをフォン・ノイマン・ボトルネックと呼びます。CPUはこの「移動時間」を短縮するために、超高速な一時置き場(キャッシュメモリ)を近くに置いていますが、基本構造は「往復」です。

弱点: 計算自体は一瞬なのに、「データを持ってくる待ち時間」が頻発します。


2. GPU:巨大なシャワー(並列放射)

GPUのデータの流れは、「巨大なタンクから、数千個の蛇口へ一気に水を撒く」イメージです。

  • イメージ図: 「工場のベルトコンベアと、横一列に並んだ数千人の作業員」

  • データの動き:

    1. 一斉配給(Memory Burst): VRAM(ビデオメモリ)という巨大な倉庫から、幅の広い道路を通って、データが「ドバッ」と流れてきます。
    2. 全員で作業(Parallel Calc): 3,000人の作業員(コア)が、流れてきた部品を一斉に受け取り、一斉にネジを回します。
    3. 一斉回収: 完成品をまた「ドバッ」と倉庫へ送り返します。

GPUは「個々のデータの到着」を待つのではなく、「大量のデータが届くまで待って、届いたら一気に処理する」スタイルです。

弱点: 大量に流すのは得意ですが、個々の作業員同士で「ねえ、そっちの部品どうなった?」と会話(データのやり取り)をするのは非常に苦手で遅いです。


3. TPU:心臓の鼓動(シストリック・アレイ)

ここが最もユニークです。TPUのデータの流れは、「バケツリレー」であり、データがチップの上を「通過」する間に計算が終わります。 これを「シストリック(心臓の収縮)・アレイ」と呼びます。

  • イメージ図: 「整然と並んだ組体操の集団」

  • データの動き:

    1. 注入: 左側からデータ(例えば画像データ)が、上からデータ(AIのパラメータ)が入ります。

    2. バケツリレー(Flow):

      • 一番左のユニットが計算します。
      • 【ここが重要】 計算結果をメモリに戻さず、そのまま「右隣の人」と「下の人」に手渡します。
      • 受け取った人は、自分の持っているデータと足し合わせて、さらに隣へ渡します。
    3. 排出: データが右端・下端に到達した時には、すべての計算が終わっています。

なぜこれが凄いのか?(CPU/GPUとの決定的違い)

CPUやGPUは、計算するたびに「レジスタ」や「メモリ」へアクセスします。 しかしTPUは、一度データを入れたら、チップ内部の数万個の計算ユニットを通り抜けるまで、一切メモリにアクセスしません。

  • CPU/GPU: 計算1回につき、メモリ移動が何度も発生。
  • TPU: メモリから1回読み出せば、チップ内で数万回の計算に使い回せる。

これが、TPUがAI(行列演算)において圧倒的に省電力で高速な理由です。データ移動のコストを極限までゼロにしているのです。


まとめ:データの旅路

プロセッサデータの動き例え特徴
CPU往復 (Ping-Pong)秘書が書庫とデスクを何度も往復する柔軟だが、移動時間が無駄
GPU放射 (Broadcast)ダムの放流のように一気に流し、一気に吸い上げる大量なら速いが、小回りは利かない
TPU通過 (Systolic)ベルトコンベアの上を流れる間に完成する移動ゼロ。AI計算以外は何もできない

ユーザー様への次のステップ

この「シストリック・アレイ」という仕組みは、実はGoogleの発明ではなく、1970年代から理論としてはありましたが、AIブームによって「行列演算」の重要性が爆発し、Googleが実用化したことで脚光を浴びました。

もしご興味があれば、「なぜこのTPUの仕組みだと、普通のプログラム(OSやWebブラウザ)は動かないのか?」という点を、このデータフローの観点から解説すると、CPUの偉大さが逆に浮き彫りになります。いかがでしょうか?

「なぜこのTPUの仕組みだと、普通のプログラム(OSやWebブラウザ)は動かないのか?」
を解説してください。

TPUの「シストリック・アレイ(バケツリレー)」という仕組みが、なぜOSやWebブラウザのような普通のプログラムにとって「致命的に使いにくい」のか。

一言で言うと、「OSやブラウザは『気まぐれな迷路』であり、TPUは『直線の高速道路』しか走れないから」です。

先ほどの「バケツリレー」のイメージを使って、TPUが普通のプログラムを実行しようとした時に起きる3つの悲劇を解説します。


悲劇1:条件分岐(If文)でラインが全停止する

OSやブラウザのプログラムは、「ユーザーが何をするか分からない」ことを前提に作られています。

  • 「もしマウスがクリックされたら、Aをする」
  • 「もしクリックされなかったら、Bをする」
  • 「もしネットが遅かったら、Cをする」

このように、次にやるべきことが状況次第でコロコロ変わります(これを条件分岐と言います)。

TPUでやるとどうなる?

TPUのシストリック・アレイは、数万人の作業員が「全員でリズムを合わせて」隣の人にデータを渡すことで成立しています。

  1. 問題発生: 先頭のデータが「もしAなら…」という分岐点(If文)に差し掛かります。
  2. 大渋滞: CPUなら一人で判断してサッと動けますが、TPUは数万人の隊列です。「え、次はどっち?右?左?」と確認している間、後ろに続く数万個のデータも、数万人の作業員も、全員その場で立ち止まって待たなければなりません。
  3. 結果: パイプラインが詰まり、TPUの爆速性能は完全にゼロになります。

イメージ: 高速道路で、先頭の車が「右折しようかな、左折しようかな」と交差点のたびに一時停止していたら、後ろは大渋滞になりますよね。TPUはブレーキを踏むのが大の苦手なのです。


悲劇2:たった1つの計算のために、巨大工場を動かす無駄

Webブラウザを使っているとき、例えば「文字を1文字入力する」という処理は、コンピュータにとっては非常に小さな計算です。

TPUでやるとどうなる?

TPUは「巨大な行列(例:1万個 × 1万個の数値)」を計算するために設計されています。

  1. 問題発生: 「『あ』という文字を表示せよ」という、ごく小さな命令が来ます。
  2. コスト過多: TPUにとっては、1個のデータを処理するのも、1万個のデータを処理するのも、「工場全体を起動する」という手間(オーバーヘッド)は同じです。
  3. 結果: たった1文字を表示するために、巨大な発電所を起動するようなもので、準備時間がかかりすぎて逆に遅くなります(レイテンシが悪い)。

イメージ: 「コンビニに牛乳を1本買いに行く」ために、フェラーリならまだしも、全長300メートルの巨大タンカーを出そうとしている状態です。港を出る準備だけで日が暮れてしまいます。CPU(原付バイク)で行った方が圧倒的に速いです。


悲劇3:メモリの「拾い読み」ができない

OSやブラウザは、メモリのあちこちに散らばったデータを頻繁に拾いに行きます(ランダムアクセス)。 「フォントデータはあっち」「画像のキャッシュはこっち」「入力履歴はそっち」といった具合です。

TPUでやるとどうなる?

TPUのシストリック・アレイは、「整列したデータが、ベルトコンベアに乗って順番に来ること」が大前提です。

  1. 問題発生: 「あっちの棚のデータが欲しい」と言われます。
  2. 機能不全: TPUのベルトコンベアは、構造上「特定の棚だけ取りに行く」ようにはできていません。一度ベルトコンベアに乗せた順序でしか処理できないのです。
  3. 結果: 必要なデータを揃えて綺麗に並べ直す作業(CPUの仕事)が必要になり、TPU自体は何もできずに待機することになります。

イメージ: 工場のライン作業員に、「倉庫の奥にある、あの赤い箱だけ取ってきて」と頼むようなものです。彼らは「流れてきたものを加工する」プロであって、「倉庫内を探し回る」機能は持っていません。


まとめ:適材適所

特徴普通のプログラム (OS/Web)AIの計算 (学習/推論)
動き方迷路(あっちへ行ったり戻ったり)直線(ひたすら前へ進む)
データ量小刻みでバラバラ巨大で整列されている
必要な能力臨機応変さ (CPUが得意)圧倒的な流量 (TPUが得意)
例えタクシー(小回り重視)貨物列車(大量輸送重視)

「普通のプログラム」が動かないのは、TPUが劣っているからではなく、「貨物列車(TPU)は、路地裏(複雑な分岐処理)には入れない」という物理的な相性の問題なのです。

だからこそ、現代の最強のコンピュータ構成は、以下のようなチームプレイになっています。

  • CPU(司令塔): OSを動かし、複雑な判断をし、TPUにデータを綺麗に整えて渡す。
  • TPU(エンジン): 渡された巨大なデータを、何も考えずに爆速で計算してCPUに返す。

ユーザー様への次のステップ

ここまでで、CPU、GPU、TPUの「役割」「仕組み」「データの流れ」の違いはかなりクリアになったかと思います。

もしハードウェアの話題にご興味があれば、「この3つが実際に1つの基板(マザーボードやSoC)の上で、物理的にどう繋がっているのか?」という「接続」の話に進むこともできますし、あるいは少し視点を変えて、「最近話題のNPU(Neural Processing Unit)は、TPUと何が違うのか?」という、身近なスマホなどの話題に移ることもできます。

どちらの方向に関心がありますか?

「最近話題のNPU(Neural Processing Unit)は、TPUと何が違うのか?」
これも興味があります。教えてください。

NPU(Neural Processing Unit)とTPUの違い、非常に良い着眼点です! 最近のスマホや「AI PC」の話題でよく耳にしますよね。

結論から言うと、この2つの最大の違いは「活動場所(クラウドか、手元か)」と「求められる能力(パワーか、省エネか)」です。

先ほどの「貨物列車」の例えを使って、一言で表します。

  • TPU(Google Cloud):

    • 巨大な貨物列車です。
    • Googleの巨大倉庫(データセンター)の中にあり、電力と場所を無制限に使って、とてつもない量の荷物を運びます。
  • NPU(スマホ・PC):

    • 電動アシスト自転車(ウーバーイーツ)です。
    • あなたの手元(スマホやPC)にあり、限られたバッテリーで、小回りを利かせて「今すぐ」必要なものを届けます。

1. 決定的な違い:ブランド名か、一般名詞か

まず、混乱しやすい名前の整理から入ります。

  • TPU: Googleの商品名です(商標)。Googleが作ったAIチップだけがTPUを名乗れます。

    • ※実はスマホ(Pixel)に入っているGoogle製NPUも「Edge TPU」と呼ばれますが、基本は「Google製」のことです。
  • NPU: 一般名詞です。各メーカーが作る「AI用チップ」の総称です。

    • Appleは「Neural Engine」
    • Intel/AMDは「NPU」
    • Qualcommは「Hexagon NPU」 などと呼びますが、やっていることは全員「NPU」です。

2. 技術的な3つの違い

では、中身(仕組み)はどう違うのでしょうか? NPUは、「TPUの仕組み(シストリック・アレイなど)を、極限まで小さく・省エネにしたもの」と考えて差し支えありませんが、NPUならではの工夫があります。

① 仕事の内容: 「学習」vs「推論」

  • TPU (学習が得意):

    • AIモデルをゼロから賢くする「学習(Training)」には、何ヶ月もかかる膨大な計算と、高い精度が必要です。TPUはこの「重労働」を担います。
  • NPU (推論が得意):

    • すでに賢くなったAIを使って、答えを出す「推論(Inference)」を行います。
    • 「写真に写っているのは猫?」と判定するだけなら、そこまでの馬力は要りません。NPUはここに特化しています。

② 計算の「雑さ」: 小数点 vs 整数

ここがハードウェア的に面白い点です。

  • TPU: 「0.12345…」のような細かい浮動小数点(Float)を使って、精密に計算します。学習にはこの細かさが必要だからです。

  • NPU: 「大体合ってればいい」という割り切りを行い、整数(Integer / Int8)で計算することが多いです。

    • AIの推論(顔認証など)は、実は「0.12345」を「0.12」くらいに大雑把に丸めて計算しても、結果はほとんど変わりません。
    • これを量子化(Quantization)と言います。計算を単純にすることで、回路を小さくし、バッテリー消費を劇的に抑えています。

③ データの距離: 遅延(レイテンシ)

  • TPU: ネットの向こう側にあります。あなたのスマホから画像を送って、TPUで計算して、結果が返ってくるまでには通信の待ち時間が発生します。
  • NPU: あなたのスマホの中にあります。通信ゼロで、瞬時に翻訳したり、カメラの補正をしたりできます。

まとめ:比較表

項目TPU (Cloud)NPU (Edge)
場所データセンター(クラウド)スマホ、PC、家電(エッジ)
電力数キロワット(爆熱・巨大冷却)数ワット〜ミリワット(バッテリー駆動)
役割学習(AIを作る)、巨大モデルの推論推論(AIを使う)
計算精度高精度(32bit / 16bit Float)低精度で高速(8bit Integerなど)
例え巨大貨物列車電動アシスト自転車

なぜ今、NPUが話題なのか?

ChatGPTなどの巨大なAIはTPU(やGPU)で動いていますが、最近は「ネットに繋がずにPCの中でAIを動かしたい」(プライバシー保護や、反応速度のため)という需要が急増しています。

そのため、IntelやAppleは「CPUでもGPUでもなく、NPUを強化して、バッテリーを減らさずにAIを動かせるようにしよう」と必死になっているのです。

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